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行動ファイナンス とは?

行動ファイナンス とは、人間の感情を加味した経済動向を解明する新しい学問である。
これまでの経済学の中で登場するモデルは、自己の利益を最大限に考え、利益最大化のために常に一貫したアクションを取り合理的かる論理的な判断を下せる人物であった。このような人物を想定し、金融市場や経済の動きを説明してきたのが、古くからの経済学だが、最近ではこの考え方が大きく変わってきている。投資家は正しい情報と知識を保有し、常に正しい行動をとることを前提に仮説を立て、投資家の心理や感情は一切考慮していなかったのだ。いくら優秀な投資家と言え、所詮は人間。当然過ちも犯す。
前述の通り、古典的な経済学のなかでは、自己の利益を最大限に考え、常に一貫した行動を取り、合理的な判断を下せる“経済人”という人間をモデルとして、金融市場や経済の動きを説明してきた。投資家は正しい情報と知識を持っており、常に正しい行動をとることを前提に仮説を立て、投資家の心理や感情についてはカバーしていなかっただ。
行動ファイナンスは、こうした経済を動かす、生身の人間の感情に焦点を当てて、心理学や統計学を応用しながら経済の動向を解明しようとした新しい学問である。この学問に定義づけられる、人間が犯しやすいファイナンス領域に関与する非合理的な判断を紹介しよう。この判断を予めメタ認知しておくことで投資の正しい意思決定にもつながるため、是非覚えておこう!
行動ファイナンス :①損失回避性
損失回避性とは、投資家が損失を抱えている状態を極度に嫌うバイアスを言う。例えば、10万円の株式投資をしていた場合、1万円勝った時の喜びと1万円損失した時のショックの大きさを比較した際、どちらの方が大きいだろうか。恐らく、多くの投資家が1万円負けたときの方が感情の振れ幅は大きいと言うに違いないでしょう。このように損失を極度に嫌うバイアスが人間にはあることを自覚し、正確な数値に基づいて判断ができるよう意識しておく必要がある。中長期的な目線で上がると見込んでいる株式に投資をしていたのに、少し下がっただけで損切してしまう、みたいな誤った判断をしないように気を付けたいものだ。
行動ファイナンス :②現状維持バイアス
現状維持バイアスとは、現状を変えようとせず、常に同じ環境や状態を保ちたいという人間の心理である。わかりやすい例で言うと、転校や転職が該当する。今通っている学校や働いている会社を気に入っているのに、わざわざ未知の環境に飛び込もうと思う人はほとんどいないだろう。ただ、他の学校や職場で、今よりもっと良い環境があるにも関わらずそれを調べようともしないというのは好機を逃しているの感じざるを得ない。
投資の世界でも同じようなことが言える。例えば日本人であれば、有名な大手企業の株式を購入する傾向が強く、他の先進国や新興国の株式や債券等は少し手を出しづらいだろう。これをカントリーバイアスと呼ぶが、親しみがあるからという理由で日本株式だけを購入するのは合理的な判断ではない。投資家で成功したいのであれば、様々な情報を仕入れ、色々な角度から見て投資判断を下する必要があることを忘れてほしくない。
行動ファイナンス:③現在志向バイアス
現在志向バイアスとは、目の前の小さな利益に目を奪われ、将来の中長期的な利益を逃してしまう傾向を指す。身近な例で言えば、住宅ローンがそれに該当するだろう。住宅ローンには様々なプランが用意されているが大きく分けると、元利均等返済と元金均等返済がある。総支払額で言えば、元金均等返済の方が支払額は少ないのだが、元利均等返済を選択する方は結構いる。返済開始当初は元利均等返済の方が返済額が少なく、後半になるにつれて返済額が上がるのが特徴で、お金のない若いうちは返済額が少ない元利均等返済を選択してしまうケースが多く見られる。このように身近な選択においても、現在志向バイアスは多く存在するので、長期的な目線も含めて決断してほしい。
行動ファイナンス:④極端性の回避性
極端性の回避性とは、選択肢の中で中間的なものを選ぶバイアスのことを言う。日本人は特にこの傾向が強いように感じる。例えば、ピザ屋でピザを選ぶとしよう。S, M, Lサイズがあったとき多くの多くの日本人はMサイズを選ぶ。確かにMサイズがちょうど食べごろであるかもしれないが、ファイナンスの視点で見ると非合理的な判断となる場合が多い。当たり前だが、ピザは大きさによって値段が変わる。そこで各サイズの面積当たりの価格を計算してみよう。多くのピザ屋においてMサイズが最も面積当たりの価格が高いことがわかるだろう。ピザ屋は好きなものを選んでもらって構わないが、投資においてはしっかりと数値を検証してから判断を下してほしい、安易にミドルリスクミドルリターンを選択すると痛い目を見ることになるだろう。
行動ファイナンス:⑤メンタルアカウンティング
メンタルアカウンティングとは、お金の出入りに独自のフレームを作って、その中で判断してしまうバイアスを言う。私はこのバイアスに最もかかりやすいから、いつも気を付けている。
これも具体例で説明しよう。地元の友達Aからいきなり、飯おごるから付き合ってや!と連絡があり集合してみるとやけに上機嫌だ。なんでいきなり飯をおごってくれるのか聞いてみると、パチンコで勝ちまくったからいつものお礼におごるよとのこと。よく見かける光景だ。これもメンタルアカウンティングの一つで、友達Aにとって、パチンコで勝った金と働いて得た収入は別のフレームで管理されており、パチンコで勝った金は自由に使えると勝手に思い込んでいるのである。お金をどう使おうが人それぞれであるが、ファイナンスの視点から考えるといささか非合理的な判断である。これまでパチンコに費やした金額を鑑みると、決して自由に使っていいお金ではない。ただバイアスにかかっていることにも気づかないままでいると、いつの間にか一文無しになってしまうので気を付けよう。ちなみに友達Aとはゴリラ取締役本人である(偉そうに記事書いているくせに!っていうツッコみはさて置き次へ進もう…)。
行動ファイナンス:⑥フレーミング
フレーミングとは、特定のフレームワークを用いて、それにより物事を判断してしまうバイアスのことを指す。営業マンは特にこのフレーミングをうまく使っている人が多く、買うべきではない商品を購入してしまったと後になって後悔することも多い。
フレーミングの具体例をあげてみよう。例えば、あなたがお金を消費者金融から借りようとしているシチュエーションを想定する。そこの店舗に掲載されているポスターには、「10万円を1か月借りて、利息はわずか500円玉3個」と書かれたいたとする。これを見てあなたはどう感じるだろうか。「1,500円だけ返せばいいのか。楽勝じゃん。」と思った方はカモ野郎だ。上記の謳い文句をしっかり計算してみると、年利18%になる。1,500円返せばいいのかと短絡的に思うカモ野郎とバイアスにとらわれず正確な判断を下せる経済人ではここにも大きな差がつく。フレーミングに惑わされず、自身の頭でしっかり判断できるための客観的な数値分析が行えるように勉強しなくてはならない。
今回は行動ファイナンスという学問に則って、投資をする上で気を付けて欲しいバイアスを紹介した。このバイアスに加え、性格の特性においても注意点があるのでこちらの記事を参考に合わせて勉強しておこう!
投資家が負ける原因の一つはメンタルである。負けてる時と勝ってる時の心理状態は全く異なるが、いつでも合理的な判断を下すことがプロの投資家に求められる。是非、以下の陥りがちなバイアスを教訓としていただきたい。